良美受難

 てっきりトイレに行けるものと思っていた良美はアトリエに追い立てられ驚きを隠せなかった。

 「トイレはどこですか?我慢できないのです」

 天井から垂れ下がるロープにその身を固定された良美は淫猥な笑みを浮かべている松井に訴えた。

 「これから三枝さんが来るから頼んでみるみることだな」

 松井はあっさりと良美の願いを却下すると椅子に座ってタバコを吸い始めた。

 嘗め回すように自分の全裸像を見回す松井の視線に耐えられず耳まで赤く染めた良美は顔を背けた。身体は大きい良美だったがその心は正反対に小さかったのだ。

 アトリエの中はあらかた栗山が買い占めてしまった事と、描きかけの絵に布が被せられていたことで良美の視線には不気味な作品の数々は写らなかったのである。

 擦るような足音と共に三枝が姿を現した。良美の自然排便が近いと恵子に言われ、三枝はモニタールームから駆け付けたのである。

 「大便がしたいのか?」

 三枝に肩を叩かれた良美はビクッと全身を震わせ、消え入るように頷いた。

 見知らぬ男たちの前に全裸を晒して便意を訴える良美はそれ自体、途方も無い羞恥を感じている。この場での排泄を命じたときの良美の動揺を考えると三枝の心は躍ってくる。思わず舌なめずりをして良美の大柄な裸体に目を凝らすのであった。

 「お願いです。トイレに行かせてください」

 涙の粒をポロポロこぼしながら身体を揺らして訴える良美は必死だった。もう。強く意識していないと内容物が噴出しかねない状況なのだ。

 「これでいいですか?」

 何食わぬ顔で松井が便器を足元に置くと良美の顔色が変わった。悪魔たちはこの場で自分のそんな姿を見物するつもりなのだ。

 「さあ、お嬢さん。その上に跨って大便をしなさい。私が見守っていて上げる」

 三枝の宣告を聞かされた良美は狂ったように頭を打ち振り、悲鳴に似た声を上げる。

 「ば、馬鹿なこと言わないで!お願いトイレに行かせて!」

 「判らないお嬢さんだな。ここがトイレなんだよ。早くしなさい」

 三枝は良美の哀訴を無視するかのように椅子に腰を落とし、突き上げられる便意に苦しむ良美の姿を見物するのであった。

 吊り上げられていたロープが緩められると良美は床の上に腰を落すと咽び泣きを始める。男たちの前にそんな姿を露呈するなど良美にとっては天地がひっくり返るような恥辱である。しかし、生理の欲求は容赦なく、良美の身体に襲い掛かってくる。

 「さあ、ここに腰を落としてやらかすんだよ」

 「さ、触らないで」

 松井に肩を掴まれた良美は激しく身を震わせると憤怒の篭った視線を投げ掛けた。

 「生意気な顔をするな。お前は奴隷なんだぞ」

 激しく叱責された松井はカッと来て涙に汚れた良美の頬を打ち叩き、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。それを目にした良美は再び、咽び泣き、松井の手によって便器の上に腰を落とさせられてしまう。

 「さあ、いくら我慢したって構わない。思い切り吐き出しな」

 松井は震える良美の肩を叩くと既にキャンバスの前に座って筆を動かし始めている三枝の隣に立って笑みを浮かべるのであった。

 「あら、まだ、終わってないの?」

 祐子を虐げてきた由里が塩野を従えて戻ってきた。良美の苦悩は更に深まった。

 「皆、お嬢さんの苦しむ姿を見て一休みしよう」

 三枝の呼び掛けに応じ、この家に巣食う悪魔たちは良美の周囲に車座になって座り、飲み物を飲んだり、タバコをすったりと寛いだ時間を過ごし始めた。

 見世物されている良美の心は破裂しそうにキリキリと痛んでいた。こんな恥ずかしい姿を露呈するなら蒸発してしまいたいとさえ良美は思っている。しかし、いくら我慢しても悪魔たちが自分を許すはずも無い。それが判っていても良美は歯を噛み鳴らし、脂汗を滴らせ、無間地獄の中で喘いでいた。

 「あ、ああ」

 不意に良美が悲しい悲鳴を放った。遂に頑なに閉ざそうとする殻を破ってその先端が体外に排出されたのだ。

 耳朶まで真赤に染めた良美は顔を左右に打ち振り、その感触に咽び泣いている。それに気が付いた悪魔たちは一斉に好奇の目を良美の股間に集めた。

 長期に渡る拘禁が招いた蓄積によってその内容物は硬く固まり、良美はその息苦しさにも苛まれながら排便を続けている。

 「どれ、どんな色をしてるんだ。匂いは結構きついけどよ」

 松井が淫猥な笑みを浮かべ、床を這って自分に近づこうとするのに気付いた良美は目を開いた。

 「お願い。近寄らないで」

 泣き叫ぶように訴えた良美を無視して松井は必死に閉じ合わせようとする羞恥に震える膝頭をいとも簡単に割り開き、便器の中を覗き込んだ。

 「いやー、すげー立派なとぐろ巻いてるぜ」

 松井の下品な揶揄を耳にした良美は下腹込み上げてくる羞恥の感触が一気に頭に立ち上り呼吸さえ苦しくなってくる。

 「うあー、凄い。でも、随分、臭いわね」

 由里にまで揶揄された良美は早く排出を終えようと必死になった。しかし、その固いへびのような物はゆるゆると良美の体外に排出されるだけであった。

 不意に良美の上体が力なくロープに支えられ、踏ん張っていた両足も床に投げたされた。

 「あっ、気を失いやがった」

 松井が慌てて裸体を支えても良美の意思とは無関係に巨大な排出は続けられていた。