祐子の焦燥

 祐子は一人で折檻部屋に残されてから随分と時間が経過していた。良美は依然戻ってこなかった。

 悪魔たちの手に掛かり身体を蹂躙されているのではないかと思うと祐子は気がきではなかった。

 自分の命と引き換えても良美の貞操を守ると固く決意した祐子ではあったがこうなってしまうと自分の非力さを思い知らされる事になる。今は良美の無事を祐子は祈るだけであった。

 鉄の扉が開かれ、両腕を拘束された良美が松井と由里に肩を押されて部屋の中に入ってきた。良美は空虚な瞳を開いたまま、悪魔たちによって拘束を解かれ前手錠を掛けられるとその場に腰を落として啜り上げ始める。

 良美の異変を感じ取った祐子は部屋を後にしようとする二人に声を掛けた。

 「あなたたち。良美さんに何をしたの?」

 くるりと振り向いた由里は真剣な眼差しを投げ掛けている祐子が可笑しかったのだろうくすっと笑ってから口を開いた。

 「何もしてないわよ。トイレに行かせて上げて、お風呂に入れてあげただけよ。嘘だと思うなら聞いてご覧なさい」

 由里にはっきりと言われた祐子は黙り込むしかなかった。しかし、打ちひしがれている良美の姿に彼らがただならぬ打撃を与えたことは確かだと祐子は思っていた。

 「それよりご自分の事を心配していた方が良いわよ。奥さん。明日、栗山さんが見えるまであなたはウンチをしてはいけないのよ。判ってる?」

 由里にに言われた祐子は悔しげに唇を噛んで頷いた。女の排泄する姿にこの上の無い喜びを感じる栗山の性癖を承知している祐子は彼がどのようなことを要求するか察しが着いていた。しかし、良美を守るためならと祐子は改めて悲壮な決意を固めるのであった。

 「じやあ、精々我慢してね」

 由里は勝ち誇ったように祐子に告げると折檻部屋を出て行った。残された祐子は相変わらず啜り上げている良美を前に声も掛けられずにいた。祐子はこの地獄のような日々から救い出してくれる者は夫よりむしろ栗山ではないのかとより現実的に考えるようになっていた。

 モニタールームに戻ってきた由里は三枝と恵子がモニターの前に陣取り、笑い合いながら画面に見入ってる姿に遭遇する。

 「何か面白いことでも始ってるの?」

 「面白いなんて言うもんじゃ無いわよ。見てご覧なさい。先輩」

 笑顔を浮かべて恵子が言うので由里もモニターに目を向けそこに展開されてるシーンに目を瞠った。

 両腕の自由を得た徹が留美の上に圧し掛かり、腰を激しく動かしているのだ。廻りにいる少女たちは唖然とした表情を浮かべ、誰もそれを止めようとはしない。ただ、由希だけが必死に口を動かして獣となった兄の理性を取り戻させようとしている。

 「こいつは本当に好き者だ。誰であろうと襲い掛かるぜ」

 三枝が溜息を付くように言うと由里は頷いたが視線は外さなかった。恋人の仮面を脱いだ真の姿を見るような思いを由里は覚えたいのだ。

 抵抗できない留美はただ目を閉じて徹の怒りが通り過ぎるのを待つしかなかった。自分が奴隷たちに与えた事に対する罰だと考えて留美はその行為を受け入れている。

 「いよいよ、動物園みたいになってきたな」

 三枝の笑い声が高らかにモニタールームに響くのであった。

 「お兄ちゃん。止して。留美先輩だって好きであんなことやってた訳じゃないんだから」

 「うるさい。黙ってろ」

 由希の何度目かの静止を振り切り、留美の太股を抱えた徹は腰を突き動かしている。留美は抗いもせず目を閉じたままだ。

 「うおー」

 雄叫びのような声を上げて徹は欲望を排出すると留美を打ち捨てるようにして立ち上がった。

 その興奮も冷めやらぬ男の姿を目にした少女たちは一様に顔を伏せる。

 「弘美ちゃん。俺とやってみるかい?」

 指名を受けた弘美は嫌々をするように頭を打ち振ると恭子の後にその裸身を隠した。

 地下室の中に誕生した野獣の存在は監禁が続く少女たちの心に新たな恐怖を植えつけるのに十分であった。