朝の決戦

 翌朝、栗山は祐子と遅い朝食を摂っていた。忍の性能テストの後、祐子を明け方近くまで抱いていた栗山は寝坊してしまったのであった。

 「奥さん。今日も綺麗ね。旦那さんに愛されて幸せでしょう?」

 祐子は由里にからかわれても何の反応も示さず注がれたスープを口に運んでいた。栗山と一緒の時の食事は普段食べさせられている奴隷食とは比べ物にならぬほど豪華なので食欲も湧いてくるのであった。

 三枝らこの屋敷の連中は昨夜の疲れも見せず、運ばれてきた檻の組み立て作業を物置で行なっており、その音が食堂まで響いてきていた。

 「どんな感じだい。この奥さんの新居は?」

 「なんかとても狭い感じよ」

 檻の感想を問われた由里は答えてから歯を出して笑って見せた。祐子はそんな話に耳も貸さず与えられた食事を黙々と平らげていた。

 食事を終えると祐子を引き連れた栗山はモニタールームに顔を出した。檻を組み立て終えた三枝が身体を休めている最中であった。

 「すいません。お手伝いできなくって」

 「何の男手は有りますから気にしないで下さい」

 三枝は笑って見せ、傍らにあった忍のハンドバッグを取り上げた。

 「この中から金が出てきました。今回の一件は栗山さんのご尽力無しには成し遂げられないものですからお納め下さい」

 それは忍の舞踊教室の今月の月謝だった。三十万近くが入った封筒を三枝は栗山に手渡した。

 「これはそのまま寄付いたします。この屋敷の運営に使って下さい」

 「そんな、栗山さんには毎月、運営費を出していただいてますから」

 栗山は祐子の飼育料として三十万円の金を毎月拠出しているので三枝はそれを固辞しようとした。しかし、栗山は無理矢理封筒を押し返した。

 「奴隷たちに新しい褌でも新調してやって下さい。そうだ、Tバックがいいですね」

 「そうですか?有難うございます」

 三枝は慇懃に礼を述べると金をポケットにねじ込んだ。これだけの奴隷を抱えていられるのも栗山というビックスポンサーがいるからに他ならないのが現状であった。

 「もうすぐ奴隷たちの振り分け対決が始ります。ご覧になりますね?」

 「もちろんです」

 栗山が物置に入ると地下から奴隷たちが次々と運ばれているところだった。真新しい檻が3個不気味に並んでいるため物置は狭くなった感じがした。

 祐子は一列に並んだ奴隷たちの中に良美を発見するとなりふり構わず走り寄るのであった。

 「良美さん。元気だった」

 「お、お姉さま」

 懐かしさと嬉しさが交錯する中、二人は身体を密着させて涙を流し合っている。

 「君はここに並ぶ必要はないんだ」

 栗山が祐子の背中に手を掛けて二人を引き離すと祐子は悲しげに良美の名を呼んだ。二人の短い再会はあっという間に終わった。

 「君は今日からここで暮らすんだよ」

 檻の扉を開いた栗山は手錠を外した祐子を中に押し込み、鍵を掛ける。檻は一畳程度のスペースで高さは祐子の背よりも低かった。左から祐子、徹、そして忍を収容する予定なのだが当面、忍は折檻部屋に三枝は監禁するつもりだった。

 「あら、便器は入れなくて良いの?」

 「いんだよ。僕がいる間は僕がさせるし、いない時はこの前みたいにするから」

 栗山が平然と答えると由里は成る程という顔付きになった。

 徹が最後に地下室から出され、天井から伸びるロープに吊り下げられると決戦の舞台は整った。

 由里は一列に並んだ奴隷たちの前に立つと厳しい目をして彼女たちを睨みつける。すっかり、準奴隷としての貫禄が身に着いた由里であった。

 「今日から規則が変わります。地上に残れる奴隷は二人だけになります」

 女たちの間から悲しげなどよめきが聞こえたが構わず由里は続ける。

 「地上奴隷は私たちの手伝いをしてもらいます。着る物もTシャツが許されます。まず、パンティを穿いているものは脱いで下さい」

 地上組で栗山から贈られたパンティを身に着けていた恭子と絵里はそれを脱いで恵子に渡した。

 「今日の競技は徹を発射させた者の勝です。一分間でリレーして徹をしゃぶったり手でコイたりして発射させたものが勝ち抜けです。二回やって、二人が地上に残れます。順番は年令の高い方からです。並び替え!」

 由里の号令で美加子、良美というように並び替えを行なった奴隷たちは足まで厳重に縛られた徹の前に整列した。

 松井がストップウォッチを手に傍らに立つと世にも無残なロシアンルーレットが開始された。皆、地上組に残ろうと必死になって徹を愛撫している。檻の中からこの世のものとは思われぬ狂乱の光景を目にした祐子はいたたまれなくなったように顔を伏せてしまうのであった。