忍狂乱

 大きく喘ぎ始め、熱い吐息を吐き出すようになった忍を目にした松井は指先をそっと挿入し、その部分が十分に潤んでいる事を確認してニンマリと笑った。

 「奥さん。もう、ぐちょぐちょだぜ。亭主とは相当してないだろう。たっぷりと楽しみなよ」

 松井はまず指だけを使って忍の肉体を探求する。深く、浅く掘り下げ、内部の天井を指の腹で擦ってみたりする。その度は忍は悔しい反応を示し、松井を喜ばす事になる。

 バイブレーターに取り替えるために松井が指を抜くと忍はカッと目を見開き、必死の眼差しを松井に向けた。

 「も、もう、止めて。これ以上、私を辱めないで」

 「何を言ってるの奥さん。楽しいんだろう。遠慮しないで気をやってしまいなよ」

 「そうだ。由里の言うとおりだ。奥さんはここで奴隷として暮らすんだからこういう事を悦ぶ身体にならないといけないんだぜ」

 乳房を揉む由里に笑われ、松井にからかわれた忍は唇を噛み締めて目を閉ざした。そんな、忍の胎内にバイブレーターが挿入され、激しく肉を抉り始めると欲望の暴走に歯止めは掛からなくなる。

 結婚当初は毎日のように夫に抱かれ、肉の悦びに打ち震えていた忍であったが弘美を出産した頃から、夫と別々の生活が続き、たまに会ってもおざなりのセックスだけで過ごしてきた忍の記憶から肉の悦びはとうに消えていた。

 しかし、悪魔たちの姦計に掛かり、悔しくも身体を燃え立たせてしまっている忍に取って、それは忘れていた記憶を取り戻すに十分すぎるものだった。

 松井の操る武器によって下半身の筋肉を激しく収縮させながら上り詰めて行く忍をこの場でただ一人手を下さず目を凝らして観察している三枝は写真の印象通りの女だと確信していた。貞淑な妻の仮面を剥ぎ取った下には肉欲に溺れる女の姿があると三枝は睨んでいた。正に思い通りの姿を忍は露呈しているのだ。

 激しく突かれるバイブレーターの震動と無秩序に与えられる刺激によって忍は頂点に追い立てられていた。

 (いけない。こんなことじゃ)

 ふと甦った自意識で唇を血が出るほど固く噛み締めた忍は一回目の波をなんとか乗り切った。しかし、悪魔たちの攻撃は弱まるどころかますます激しさを増してくる。

 「もう、少しで往生しそうだよ」

 忍が切羽詰った息を吐き出し始めたことに気が付いた由里が声を掛けると松井は責めに拍車を掛ける。

 「あっ、往く、往く、往いっちゃう~~~」

 遂に激しい波に巻き込まれた忍は絶叫のような叫びを上げて頂点を極める。その瞬間、全身の血が一点に集中するような錯覚を覚えた忍は次にその血が一気に噴出するように身体中がカーと熱くなった。

 「あ、あ、あなた~~」

 夫に訴えるように一声、叫んだ忍は全身の筋肉を緊張させ、大きな波に飲み込まれた。

 瘧に掛かったように頬をブルブル震わせ、頂点を彷徨っていた忍はやがてがっくりと首を横に伏せた。悪魔たちの手管により、悔しくも忘れていた肉の悦びを思い出さされた忍はうっとりしたような表情を見せて快楽の余韻に浸っている。

 男たちは忍が頂点を迎えた事により、ほっと息を付いてその激しい反応振りを口々に揶揄するのだった。

 「凄い、乱れようだったじゃないか。よっぽど男に飢えてるみたいだな」

 「なんか、吸い付いたら離れない感じでした。これは掘り出しもんかも知れませんよ」

 大野が未だに痙攣を示す忍の下半身に目を注いで言うとようややっと矛先を収めた松井も楽しそうに笑うのであった。

 男たちの卑猥な会話も全身の血が熱く煮えたぎってしまった余韻に浸っている忍の感覚を通り過ぎて行くだけであった。セックスすること自体久々の忍は思いも掛けぬ連中の手によって肉の悦び呼び覚まされてしまったのである。

 「奥さん。目を開きなよ。完全に往ったんだろう」

 由里に頬を揺さぶられた忍は潤んだ瞳を開くと恥ずかしそうに頷いてみせる。しかし、それは自分が悪魔たちの手管によって淫情を極めてしまい、そのあられもない姿をはっきりと晒してしまうという現実に引き戻され、忍の表情は見る見るうちに悲しく曇り出す。

 「まぁ、凄く悦んだのね」

 見事に城門を打ち砕かれ、その痕跡を晒している忍の下半身を目にした由里はティッシュを取り出すと机の上に身を寄せた。

 「可哀想だからお掃除してあげる。うふふ、寂しかったのね。奥さん」

 由里に意地悪な言葉を吐かれながら情欲に塗れた肌を拭われる悲しさに忍はシクシクと啜り上げ始める。悪魔たちによって完膚なきまでに叩きのめされた忍はこれからの日々の事を考えていた。女として人間としてどこまで自分が彼らのいたぶりに耐えられるだろうか?忍の心は震えは止めようとしても止められるものではなかった。

 「さあ、終わりよ。もう、一回、往って見ましょうね。奥様」

 由里に逞しい太腿を叩かれても忍は拒否したり、哀願の言葉を吐かなかった。彼らのなすがままにこの運命を委ねるしかないと悲しい決意を固めた忍であった。