悪魔たちの所業

 「有難う。満足したよ」

 祐子の口中に欲望を排出した栗山は満足げな笑みを浮かべて机を降りた。

 祐子は不快な作業を終えてほっと一息付いた。しかし、便意は容赦なく差し迫ってくる。

 生まれたままの素っ裸を両足を広げさせ、吊り上げるという言語を絶する姿勢を強制されている祐子には排便の恐怖が忍び寄っていった。

 祐子は唇を噛み締め、吊り下げられている腕時計を見た。まだ、八時半にもなっていない。祐子は深い溜息を付いた。まだ、三十分以上も時間がある上に祐子はもう一度、浣腸されなければならないのだ。

 「えへへへ、奥さん。俺の浣腸はちよっときついぜ。我慢できるかな?」

 酷薄そうな笑みを浮かべた松井が浣腸器を手に吊り上げられた両足の間から自分を見ているのを目にして祐子は引きつった表情を浮かべる。

 「俺には色仕掛けは効かないぜ。俺はこれが楽しみなんだ」

 松井はそんな事を言うと机の上に腰を乗せ、濡れそぼった標的に目を注いだ。

 「俺も色んな女に浣腸してきたけどよ。奥さんのが一番、可愛く見えるぜ」

 祐子の秘められた蕾をそんな風に表現した松井は有無を言わせず矛先を深々と埋め込んだ。

 「うぐっ」

 その荒々しい行為に突き上げるように便意が誘発された祐子は眉を寄せ、低い呻きを洩らす。

 「それ、たっぷり味わいな」

 浣腸できる喜びにに声を震わしながら松井はポンプを力一杯押し込んだ。

 染み渡る溶液の非情さに祐子は汗を浮かべた額を揺らして必死で耐えている。

 そんな祐子の切羽詰った祐子の表情を目にした松井は片頬を歪めると残酷な遊びを開始した。

 「あっ、何をするの?」

 急激に便意が接近する恐怖に祐子は激しく吊り上げられた二肢を揺らして抵抗した。松井が馬鹿力を発揮して内容物を吸い上げているのだ。

 「えへへへ、慌てるな。ちよっとしたお遊びだ」

 残酷な笑みを浮かべた松井が今度はポンプを押し込み始めると祐子は全身を緊張させた。唸りを上げた奔流を何とか押し留めようとする悲しい努力であった。

 「お願い。もう、もうしないで」

 涙を流して哀願する祐子の顔を目にした松井は暗い悦びを倍化させ、もう一度ポンプを引き始める。

 「ひ、卑怯だわ。ひ、酷い」

 祐子は悲鳴のような叫びを上げると吊り上げられた双臀をガクガクと揺すった。このまま、浣腸器を抜かれたらもう我慢することは不可能なところまで祐子は追い詰められていた。

 松井は再びポンプを押し込み、浣腸器を得意げになった引き抜いた。決壊の危機は逃れたものの祐子の便意は急激に高まり、薄壁一枚で僅かに崩壊を支えている状態に陥っていた。

 もう、限界が近いと知った三枝は胸を躍らせながら汗みどろになって便意と戦い続けている祐子の傍らに寄った。

 「もう、駄目かね。奥さん」

 祐子ははっとしたような表情になり、非情な戦いの中に一縷の望みを繋ぐかのような視線を憎い三枝に送っる。

 「もう、我慢できません。ゆ、許して下さい」

 必死に訴える祐子の全身は汗で滑ったように光り輝き、苦しい息を吐き続ける唇はワナワナと震えている。そんな哀れっぽい風情に三枝は何ともいえぬ色気を感じるのであった。

 「そうか、奥さんが排泄したら、良美は松井と塩野に抱かれることになるんだよ。それでもいいんだね?」

 三枝に最後通牒を突きつけられた祐子は激しく頭を振った。

 「それだけはお願い。勘弁して下さい」

 祐子は三枝の情に縋るしかないと必死の哀訴を重ねた。しかし、三枝の態度は変わらなかった。

 「それだけ、義理の妹が可愛ければ後二十五分、我慢することだよ」

 「出来ません。出来ませんからこうして・・・」

 涙を流しつつ哀願する祐子に最後の試練を与えるべく三枝はその崩壊寸前の下半身に身を寄せた。その部分が時折、大きく息をするように口を開きかけるのを目にした三枝はチューブで出来た空気ポンプを取り出した。

 「これで精々頑張ることだ」

 チューブの先端を結合した三枝は激しくポンプを押し始めた。

 空気を注入された祐子の便意は一時的にせよ遠のいた。しかし、送り込まれた空気で祐子の腹部は膨張し、苦しみは倍贈した。

 「も、もう、入れないで」

 膨張感に耐え切れず祐子が喘ぐように訴えると三枝はその凄艶な表情を見つめて笑みを浮かべる。

 「じやあ、抜いてやろうか?」

 「止めて!」

 三枝がチューブに手を掛けるのと祐子は首を左右に打ち振り制止した。空気の圧力によって便意が抑制されていることを悟った祐子はそれが抜かれることによって崩壊の危険性が高まることを懸念している。

 「抜かれたら、で、出ちゃう」

 恥じらいを浮かべながら真実を口にした祐子は肩を震わせ、嗚咽の声を洩らし始める。祐子にとってその状況は正に進むも地獄、戻るも地獄の状況に他ならなかった。まだ゛、制限時間には三十分近くある。祐子の脳裏に絶望の二文字がちらつき始めた。

 「ビールでも飲みましょう」

 松井の提案で悪魔たちは祐子の肉のうねりを肴にビールを飲み始める。

 松井と塩野はもうすぐ自らの獲物となる良美に卑猥な視線を送り、何やら話し合っている。良美にとっては自分のことより祐子の事の方が心配だった。自分を救うために祐子は地獄の苦しみにのたうっている。出来れば祐子に駆け寄り、一言、もう、止めるように伝えたかった。しかし、悪魔たちはそれを許さず、良美は胡坐を掻いた三枝の膝の上に載せ上げられ、祐子の無残に崩壊していく様を見物させられていた。